ストレスコーピングとメディエイション


 ヒトにとっての重大なストレッサーは、言語による記憶-行動系という機能を持ってしまったが故の「マインドワンデリング」です。意識の半分近くを過去の嫌な記憶や未来への不安が占拠してしまい過剰なストレス反応を誘発します。
 そこでこの言語による記憶-行動系(パブロフのいう第二信号系)からその改善を図るものが「ストレーコーピング」です。最低100個のストレス対処法を書き出します。そして、その効果(ストレス軽減感)を検証するのが「行動と気分」からの対処法を評価し実際に取り組みを行う「認知行動療法(CBT)」です。重要なポイントはここでも「身体運動(行動)」を伴うということで、ストレス反応の本質=行動による危機回避が根底にあるのです。いわば「富山の薬箱」にも例えられるもので「この症状」には「あれとこれの薬(・・があるから大丈夫)」という数多くの対処を蓄積してゆくもので「パニック」への対応もある程度想定します。
 一方「メディエイション(瞑想から宗教色を取り除いたものとされる)」は言葉ではなく感覚-行動系(パブロフの第一信号系)からアプローチを試みます。ヨガや自律訓練法と同じく、私たちが唯一制御可能な自律機能=呼吸を手掛かりとし、身体感覚との対応から「いま」のみを切り出します。過去や未来への言語意識を制限し、意識の全てを「いま」の呼吸や身体感覚にゆだねます。指先の血管の血流変動と呼吸制御を組み合わせてビジュアル化した「ストレス低減トレーニング機器」も市販されています。スマートフォンでもこの指先の血流変化からストレス度を評価するソフトウェアが利用できます。
 感覚と言語による記憶‐行動系を持ってしまったが故の私たちの宿命は、感覚と言語の両者をつなぐ身体運動によってのみ改善されるのかもしれません。
 しかし重要なことは、コーピングもメディエイションも過剰なストレス反応への対処法であって、ストレッサー自体を消し去ることはできないという点です。職場環境や労働条件の改善、休息や余暇時間の充実といった本当の意味での「働き方改革」がなければ「ストレス社会」の根絶は不可能なのです。(2019.04.15)


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